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UR_RIGHT_LAB

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プロローグ

プロローグ

「志望動機などは十分に分かった」
 黒髪ショートの女性面接官はキーボードを忙しなく叩きながらそう言った。彼女の着用する実験用白衣の胸元には「シロイ」と刺繍がされている。
「これがポートフォリオサイトだな」
 彼女はカチカチとワイヤレスマウスを操作する。
「いや、それにしても嬉しいよ、こんな研究所に応募してくれて。研究員は助手一人だけでね、困っていたんだ。そういえば君、助手に似ている気がする。後で会わせてあげよう」
「ええ、是非ともお顔合わせしたいです。研究所の先輩になる方ですから」
 あはあは、と彼女は笑い軽快にエンターキーを叩いた。
「これは……本の表紙かい? 変わったサイトだね。どれどれなるほど、プロローグとは小説らしい。ん? 私みたいな人物が面接官の話だなんてまたおかしなサイトだな。セリフも覚えがある。気味が悪いね」
 
 不意に「メニューはどこだい?」と彼女は尋ねた。
 画面上でカーソルをうろうろとさせ、どこをクリックすればいいのか分からないようである。
「ページ上部のタイトルを押していただければ」
 彼女は指示通りカーソルをタイトルに被せると、色が変わることを確認して「うーん」と言った。
「UIというのはパッと見で分からないといけないんじゃないのかい? よくある三本線のボタンとかあるじゃないか」
 彼女は腑に落ちない表情で小説に視線を戻した。
「なんだ、わざわざ聞かずともメニューがどこにあるか小説に書いてあるじゃないか。一言一句そのまま。それに私の行動まで」
 彼女は不思議そうな表情で小説を読み終えると、サイト上部、ノンブルの隣にあるタイトルをクリックした。

伊藤右貴いとうゆうき

1995年、愛知県生まれ。名古屋市立大学芸術工学部情報環境デザイン学科所属。眼鏡以外に何のアイデンティティーも持たない大学生。小林泰三森見登美彦米津玄師小林大吾トクマルシューゴが好き。
大学ではプログラミングを中心としつつ様々な分野をつまんでいる。新しい技術などに興味がある。
連絡先:urrightlab→gmail.com
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